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大阪高等裁判所 昭和34年(く)38号 決定

少年 R子

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、原決定は本件少年の居住地附近の環境が悪く、交遊関係に欠陥がある旨指摘しているが、堅実にミシン加工業を営み、周辺が清潔、健全であり、虞犯的な雰囲気のない長姉G子が少年を引取り、厳重に監督する旨を申し出ている外に、少年を非行に設い込んだK子が既に少年院に収容せられているので、悪影響を及ぼす交遊関係は全然なく、その上、少年は本件調査中自発的に非行を自白し、改悟の情見るべきものがあるから、少年を少年院に収容して矯正教育を施すまでもなく、保護観察により環境を調整して所期の効果を期待することができる。それ故、少年を少年院に送致する原決定は、著しく不当であるから、取消されなければならないというのである。

所論に鑑み記録を検討するに、少年が数回非行歴を有し、先に昭和三三年一二月一八日窃盗保護事件について審判を受けた際には、所論のような保護者の希望に基いて保護観察処分が採用せられ、少年の実姉G子の許に引取られ、ミシン加工業に従事したが、間もなく昭和三四年二月中頃母の許へ帰り、キヤバレーでダンサーや社交係をして働き、その間友人K子と共に不良の交遊を重ね、原決定摘示のとおり、単独で五回、同人と共謀して一回、それぞれ窃盗の罪を犯し、就中その第一の二の犯行直後、司法巡査に発覚し、長姉に引渡されたのに拘らず、毫も改悛せず、その後更に数回犯行を繰返し、保護者の保護監督能力が十分でなかつたことが認められる。少年の盗癖がつとに一〇歳の頃から断続的に発露して昂進し、常習化の疑のあること、少年は智能が低く、鑑別の結果によれば精神薄弱と鑑別されていること、幼時から母の溺愛を受けて気ままに育ち、父の厳格な態度に反抗心を抱いていること、その他諸般の事情を綜合すると少年に対しては収容保護が相当であると認められるので、原決定が少年を中等少年院に送致する旨を決定したのは相当であるから、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項に則り主文のとおり決定をする。

(裁判長裁判官 小田春雄 裁判官 竹中義郎 裁判官 古川実)

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